仮面親子2012年05月28日

面白そうなヒューマンコメディがあるので観たい、としもみに言われたので、テレビ放映されてた
「みんな元気」という映画を見ました。
仕事一筋で定年退職の後に妻をなくした父親が、それぞれ大人になって自立し各地で暮らす「自慢の子供たち」にサプライズで会いに行くというのが大まかな流れ。
人の感想をみる限りでは、家族愛に感動とかいった内容が殆どなんだけど、私にとっちゃあまりにも自分の現実そのもので、実家の様子をまざまざと見せられているようで感動どころか悶々とした気分に…orzそれがある意味凄い作品だとも思いましたがw

空気の読めない、不器用だけど悪いやつじゃないお父ちゃんの演技がコミカルで最初のうちは笑っていたんだけど、会う子供たち全員が「父親が来る!」と本人には内緒で事前に電話でやりとりし、周到に準備して必死に「自慢の子供」を取り繕うあたりからだんだん笑えなくなってきたという。
小さい頃からずっと親の過剰な期待を押し付けられ続けて育った大人たちの描写が見事でした。

父は見栄っ張りな性格なのだが、この見栄を子供にも適用しちゃってるんですね。
周りに自慢できるぐらい立派でまっとうな子たちの親である、という見栄。
子供たちは、唯一連絡の取れない長男(?)…売れない画家が薬物摂取で死亡している件と、それぞれが抱える親にとっての「あっちゃいけないこと」を隠す為に嘘をつく。
親にそうなれと言われた期待に応えるべくダンサーになったのに
「お前は小さい頃からダンサーになるのが夢だったものな」と言葉をかぶせられて苦笑する娘。
(実際娘がダンスをしてるシーンが無いので、ダンサーになったという話も嘘かもしれない)
当初の夢だった指揮者ではなく打楽器奏者になった息子に「打楽器なんて自分にもできる。なんで指揮者じゃないんだ」と不満を洩らす父親。
父の訪問に合わせて立派な家を借り、高級車を用意し、別居中の夫を連れ戻す子供たち。
別れ際に必ず父が問いかける「幸せか?」子供たちは笑顔で答える「幸せよ」

作り笑いと虚構で固められた接待に気づいた父は「お前たちは信用できない」と悲しみをぶつける。
そりゃあそうだろう…子供に期待を押し付け、期待通りにならないものは認めない彼には現実を受け止めることが出来ないんだから。だから子供たちは「真実はパパには受け止め切れない」と返す。それでも、と真実を聞かされた父はやはり受け止め切れない。
孤独に耐えかね薬物で死んだ画家に「それは私の息子じゃない」と連呼するのだ。

画家の人は父に特に厳しくしつけられていて、幼少時の過去のシーンで父に怒鳴られ始めると、表情が張り付いたような微笑で固まるのがあまりにも痛々しいし、自分とシンクロして泣きそうになった。あまりの恐怖と悲しさに、顔も心もこれ以上何も感じないように、冷たく固まってしまうのだよ。それが親には、ナメられてる、ふざけてると見えて「しつけ」がさらにエスカレートする。兄弟たちはその様子に「もう限界」と言い捨て、その場から立ち去っていく。

結局オチとしては、持病の発作で倒れた父が、夢の中で子供らの本音を聞いて反省し、死んだ画家の息子に謝罪し、元気になった後で家族集まって団らんってシーンで終わるのだけど、夢で皆の心が通じ合ってハッピーエンドとかそれこそ夢物語だろ!とココだけ不満だった。
ら、この映画、20年以上前に作られた原作映画があったらしく、そっちは団欒ハッピーじゃなくて
父が帰宅後妻の墓前で「みんな元気だった」と伝えるとゆーものらしい。
死んだ息子は原作だと同性愛者で、それが家族に打ち明けられず苦悩した上での自殺らしい。
確かにコッチのがしっくり。

親と子が支えあう家族愛映画、には見えない1本でした…
ふつーに見れる人には素敵なストーリーに思えるのかな。

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